幹太さんは出会って間もなくから
ぼくのことを「たかしちゃん」と笑顔で呼ばれる。
それを何の違和感もなく自然に成立させてしまうのは、
幹太さんの人柄としか言いようがない。
幹太さんは「筆で書くのが好きなんだ」と
いっぱいの笑顔で話される。
お父上である緒形拳さんもそうであったことから、
歩まれた人生の中で自然と師事されて来たのだろうと感じる。
ある日、
「いつか一緒に作品発表する場を持てたらいいですね」と、
もちかけたところ即答で「いいね! 絶対やろうね」と
笑顔で返してくださった。
それから一ヶ月後、
「近々山の中に硯を作るのですが、
完成したらいらっしゃいませんか」
と、ご連絡を差し上げたところ
即答で「行く!」とご返信をくださった。
当日、完成を迎えた山硯で墨を磨る幹太さんは
「すごいところに作ったね! 貴重な経験をありがとう!
最高に楽しかった!」
と、溢れる笑顔をくださった。
幹太さんとはそういう方である。
表裏があるないといった話ではない。
表を行く人である。
だから言葉はいつも燦々としている。
そんな幹太さんを作った言葉、
好きな言葉とはどういったものなのか、
ぼくはとても興味深くて、
ご自身の肉筆で表現なさいませんかともちかけてみた。
「了解!」
と、その日も即答快諾をいただけた。
かくして出会いから一年経たず、
オンライン展覧会でご一緒することが叶った。
「書は人なり」という言葉がある。
きっとこの作品たちは笑顔の中で作られた書で、
また、笑顔を作っていく書であるのだと思う。
制作意図
青柳貴史にはびっくりさせられる。
「今、コロナだしケータイで見れる美術館をやろうと思う。良かったら参加して下さい。」と、
思いも付かないような発想をしてくる。
その後、ビブリオで連展やりたいですネ、やりましょう、制作費もかけないように...。
制作意図、山硯、出会い
それぞれを文章に起こして下さい、と。
この人のこだわり、作品にかける思いなどは
食事をしながらいつも感心して聞いている。
10歳も年下だけれど、
作品づくりに関しては大先輩。
たかしちゃんに委ね、着いて行こうと思う。
それだけこだわり、
魅力的な人だから。
そして今回は、
2016・2017年以来の展覧会となる。
いろんな人に言われた、
『もう少し小さな作品が欲しい。
大きなものは飾るところが無いので』と。
なので出来る限り小さな作品に
挑戦してみます。
― 2020 8/3 緒形 幹太
※文章を一部校正して記載しております。
『パリ』40×50cm
『山梨』27×35cm
- 『筆』32×48cm
出会い
ある時、亀ちゃん(市川猿之助)からLINEが来た。
『今、製硯師の青柳貴史さんと居るんだけど、
お父さん、緒形拳さんが使ってた硯を見たいので写メして欲しい』と。
自宅に居たので、目に付いたものを5~6面送った。
あ!これは中国の清の時代だと思う、と。
さすがに良い硯使ってますね…、と。
´青柳貴史´
どこかで聞いた名前だなぁ。
検索すると、あ!情熱大陸に出てた人だ、硯の石と一緒に風呂入ってた人だ、と思った。
それからしばらく間が空き、亀ちゃんからチラシがLINEに届いた。
『青柳貴史の硯展「日々」』
これは行きたいと思い、初日に神田駿河台のブックカフェ エスパス・ビブリオへ。
初めて見る硯の美しさに。
しばらくぼー然とした。
こんなにキレイなものなのか!
しかも人の手で、石の塊をそいでそいで一つの硯へ。
一緒に風呂に入って、硯のイメージトレーニングを
している姿が浮かんできた。
この人は、すごい、ものすごくこだわりの持った
職人だと思った。
会場内を何周回っただろうか。
お客さんも少し引いたので青柳さんに話しかけた。
´あ、緒形デス。硯を見に来ました。
亀ちゃんから紹介されて!´
「初めまして…」
数分話した頃、あ!この人とは仲の良い友達になれると思った。
人間も何十年とやっていると、気が合う、合わないと言うのは少し話せば直感的にわかる。
「初日にわざわざ、ありがとうございます。」
その日は硯の説明を一点一点してくださり、ギャラリーの齋藤さんとも話して、
連絡先を交換して神田を後にした。
今年2020年になり、我家へ改めて硯・筆などを見に来たり、
たかしちゃん(二度目に会った時からこう呼ぶようになった)の工房へお邪魔して落款を一緒に彫ったり、
ステーキを食べに行ったり、中華街へ行ったり。
月に一度、今後の事を話しながら、刺激をいただきながら楽しい時間を過ごしている。
※文章を一部校正して記載しております。
『高知』30×43cm
『大阪』32×40cm
『山形』32×48cm
『青森』 32×48cm
『酒』32×40cm
『茶』28×42cm
- 『沖縄』
山硯
ある時、
「今度宮城の山の中で硯を、天然の硯を彫ろうかと思ってるんです。
そこでもし良ければその硯を使って字を書きませんか?」
と、たかしちゃんが言った。
話しだけ聞いてても、山を硯に?
イメージが湧かなかった。
当日、寒い中友達と仙台へ。
そこから車で小一時間。
いや、ビックリした。
本当に山の斜面が硯になっている。
こんな事を思いつくのがすごい。
持って行った、父が使っていた墨で磨ってみた。
なんとスムーズな、体勢も悪く磨りづらいが楽しかった。
こんな楽しい遊びはない。
父に話したら間違いなく「俺も行く」と言っただろう。
「幹太さん、山の中の硯を使って字を書く、
『たぶん人類史上初』だと思いますよ」
と、たかしちゃんは言っていた。
この人スゲー 発想力がすげー、と。
7~8人のチームだった。
カメラマンの齋藤さんをはじめモンベルの岳社長(テントまで用意してあった)現地スタッフ、
ドキュメンタリーのカメラマン。
このチーム青柳のプロジェクトに参加出来て良かった!
又、人類史上初の何かを一緒にできたらと思う。
※文章を一部校正して記載しております。
山硯 24.2×27.3cm
筆は心なり 墨は手なり 硯は研なり 24.2×27.3cm
緒形幹太プロフィール
1966年11月生まれ。
俳優。
2015年より書家として活動。
緒形拳に書を師事。
雅号幹山。
【動画】
KANZAN -HIKIMI- >
【作品】緒形幹太(号:幹山)
【写真】齋藤芳弘(スーパースタジオ)
【映像】山本恭平(エムスタ)
【サイト制作・演出】藤田圭(Kei’s Factory) & Mami