歙州眉子紋随形淌池硯

歙州眉子紋随形淌池硯

きゅうじゅうびしもん ずいけいしょうちけん

小振りながらも稀な佳材であったので、余すことなく硯に導こうと考えた。
造形といえば側面の皮を剥いた程度なので、原石とほぼ同寸法で仕上がっている。
眉子紋特有の石紋が美しいが、特筆した点はこの材の「粒度」である。
丁度良いとはこの石だと感じた。
石としての硬さ、粒子の柔らかさ、肌理の細かさ、どれをとっても丁度良い。
彫りやすい石は総じて墨を磨った時に極上の磨墨感を味わうことができる。
よって佳材の佳を活かし、実用に心地よい墨堂、墨池の配置設計をした。
結果、総合的な造形バランスは素朴な日本の硯式比率に近くなっている。
使い勝手は良いけれど稚拙な実用硯に見えてしまうことを防ぐため、
淵を浅くなだらかに彫り、覆輪的要素を施した。
しかしながら表、裏に見ることができる眉子紋の石紋こそこの硯の醍醐味である。
墨を磨る前に水を張って楽しんでいただきたい。

  • 硯材|歙州
  • 様式|淌池硯
  • サイズ|
    103×131×11mm
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この硯について

撮影:河内彩