きゅうじゅうびしもん にちげつけん
小振りで愛せるもの。 古来より文人墨客の世界にみる「文房清玩」の考えを意識した。 小さくて、良い物。 それらには共通してどこか文化の香りがある。 材がよく、作りに品があり、どこか愛嬌がある。 製作に当たって当時の文人たちが愛した世界観に向き合ってみた。
手の平サイズの中に向き合った世界観を宿したかったが、ただ小さいことで、「おもちゃ」のようになってはいけない。 まず眉状の石紋を横目に取り、正統派な構えから入った。 そして1ミリの覆輪、ミニマムな月型墨池を設置し、造形にエッジを加えることで硯相にメリハリを付けた。 小判型に整材した時、野暮ったさを回避するために厚さは1センチとし、高さを含め、木箱格納時に総合的に成立する造形を目指した。 文房清玩には硯の箱に本体と同等の価値を見出す考え方がある。 箱には小葉黒檀の材を使用することで石材色との調和を図った。 また、この硯には納める木箱ごと受ける台座を設けた。 硯の実用用途として不要に思えても、足元をしっかりと支えている。 それは視覚的効果だけではない。 小さくて、どこか良い物には、用途以外に惹きつける魅力がある。 それはきっと硯の世界だけではない。
撮影:河内彩
小振りで愛せるもの。
古来より文人墨客の世界にみる「文房清玩」の考えを意識した。
小さくて、良い物。
それらには共通してどこか文化の香りがある。
材がよく、作りに品があり、どこか愛嬌がある。
製作に当たって当時の文人たちが愛した世界観に向き合ってみた。
手の平サイズの中に向き合った世界観を宿したかったが、
ただ小さいことで、「おもちゃ」のようになってはいけない。
まず眉状の石紋を横目に取り、正統派な構えから入った。
そして1ミリの覆輪、ミニマムな月型墨池を設置し、造形にエッジを加えることで硯相にメリハリを付けた。
小判型に整材した時、野暮ったさを回避するために厚さは1センチとし、高さを含め、木箱格納時に総合的に成立する造形を目指した。
文房清玩には硯の箱に本体と同等の価値を見出す考え方がある。
箱には小葉黒檀の材を使用することで石材色との調和を図った。
また、この硯には納める木箱ごと受ける台座を設けた。
硯の実用用途として不要に思えても、足元をしっかりと支えている。
それは視覚的効果だけではない。
小さくて、どこか良い物には、用途以外に惹きつける魅力がある。
それはきっと硯の世界だけではない。